母が癌で余命宣告を受けた。もって1年ほど。
私は物心ついたときから母と性格が合わず、ずっと苦しい思いをしてきた。一人っ子だから嫌でも向き合わなければならなかった。
だから、電話でそれを聞いたとき、もうすぐ解放されるんだとホッとする気持ちのほうが大きかったかもしれない。
何でも否定されて、何でも頭ごなしに決めつけて叱る人だった。
自分が結婚して子供を産み育てるようになって、ますます母への嫌悪感は増した。
何をしても褒められず、甘えることも小学校に上がる頃には諦めた。抱きしめてもらってことなんて、記憶にない。何か問題があると、こんなにしてやってるのに他に何が欲しいんだと言われた。
3度の食事だけは食べさせなければと必死だったと言われたことがあったけれど、小さい私はそんなことよりギュッとしていつでも味方だよと言ってほしかった。思春期は衝突ばかりでもっと苦しかった。
母にも色んなことがあったのだろうけど、手の込んだ料理より、抱きしめて受け止めて欲しかったと思う。
家の中に味方がいなかった。
いま、余命宣告を受けた母に、私はどう接すれば良いか分からない。
どんな別れが似合うんだろう。