あまりの空腹にシュガートーストを作ったけど一口囓ってぼんやりスマホを眺めている間に冷めて固くなってしまった。
推しのYouTubeチャンネルに新作動画がもう2本は溜まっているけれど、観る気にもなれない。
テレビを観る気にもなれず、静寂さと夜風の匂いと蛙や虫の鳴き声に包まれる。
母が帰ってくるまで、この家はひどく静かだ。
亡父の咳払いが、今も耳にこびりついて離れない。
笑うことも泣くことも、一丁前に器用に出来てしまう僕を、
ほんとうは何一つ出来てなどいない僕を、父さんは見ているのですか。
弟は立派にやってくれていますよ、見ていますか。
貴方に『家族や家のことを頼む』と任された幼いあの日から、女だけれど長男のつもりでいたけれど
私 何にもできないみたい
父さん
出来損ないの私を 今更赦してくれますか
貴方の望む花嫁姿すら見せてあげられず結婚自体帳消しにしてしまった私を 父さんは恨みますか
次は何を護ればいい
父さん ごめん
『幸せになって』と
あの言葉だけは まだ
まだ、幸せになどなりたくないの
1人きり失意の海底に沈んでしまいたいの
ごめん 父さん
それ以外のことはもう少し歯を食いしばるから
もう少し背中を預けていて