私の人生最後に食べたいものは多分「焼きプリン」だと思う。
こう言っちゃあれだけど、すごく否定されて生きてきた。なにに対しても。好きのこと一つすらも。それは食べ物も例外じゃなかった。
「食べたいものある?」と聞かれ焼きプリンを提案すると一番安いものですら嫌味や小言をチクチク言われた。だから食べたいものすらも言えなかった。
親が離婚して母の方について行って、お小遣いで買った森永の焼きプリン。(余談ですが、親が離婚するまではお小遣いはもらえず、どうしても欲しいときは父親に土下座して頼んでました。母がお小遣い欲しかったら気軽に言うんだよと言ってくれたので少し楽に頼めるようになりました)
幾年ぶり、少なくとも6~7年はたべれていなかった私の大好物。一口食べて涙が溢れました。自分の尊厳や、こころの大事な部分を取り戻せたような、そんな気がして。
それからは泣きながらプリンを食べた。顔が涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら、途中で鼻が詰まりながら、涙でしょっぱくなっても止まらず食べた。食べ終わっても涙は止まらなかった。
あれから二年以上経つけど、不定期で焼きプリンを食べる。相変わらず美味しい焼きプリン。
けど、あの時食べた塩辛い焼きプリンの味を私は一生忘れないだろう。