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♡ショートストーリー♡
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【眠りの箱】
つぐみは不眠症である。夜中に1時間に1回起きる。心療内科で睡眠薬を処方されているのだがなかなか効かない。日中、眠くてうとうとして何も手が付けられない。
ある日、本屋さんで「快眠の箱」というものが売っていた。中に小さな箱が入っているようだ。藁にもすがる思いで購入した。2000円だった。
帰ってきて早速 開けてみる。すると、布製のものが入っていた。触ってみるとぼふっと、大きくなり人ひとり寝転べるサイズになった。説明書を読んでみる。【この布製の箱型の中で寝ると快眠できます!ぜひお試し下さい】と書いてある。試しに箱の中に入ってみる。うとうと…すぐに眠くなってきた。あ、いけない今ポトフを作っている途中なんだった、寝ちゃだめだ。
「じっくりコトコト…」この待ち時間が退屈でたまらない。いつも音楽を聴きながら待つ。
30分後、出来上がった。今は秋。温かいものが食べたくなる季節だ。
「美味しい…。」つぐみは実家に住んでいる。
「お母さんポトフ出来たよ。」
「あら、じゃあ夕飯にしましょうね。」
「今日ね、おもしろい本買ったの。」
「本屋に行ったの?」
「うん、快眠できる本…っていうかテントみたいなんだけど。」
「色々、考えるわねぇ。」
「さっき試しに入ったら数分で眠くなったの!すごくない?」
「姉ちゃんだまされやすいからなー。気をつけろよ。」
弟の祐二が心配そうにしている。
「大丈夫だって!結果は明日分かるわ。」
つぐみは部屋に戻ると寝る準備をして、お気に入りの毛布とまくらを用意してテントに入った。すっと眠りに入った。
目が覚めると朝の5時だった。すごい!これはすごい!朝まで寝れた!
それから2度寝して、8時にリビングに行った。
「お母さん、すごいの!朝の5時まで寝れたのよ!」
「偶然じゃないの?」
「偶然でもすごい!このすっきりした目覚めはすごい!」
つぐみは感激した。その次の日もまたその次の日も快眠できたのだ!
「すごいわ、どんな薬より寝れる!」
以後、つぐみはそのテントで寝ることにした。偶然に救われた。
〜終わり〜