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マモリメの手紙
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♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ ♡ショートストーリー♡ ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ 【病院の死神】 「嫌、私は行かない。」 断固として言い張る若菜に、みんなは困ってしまった。 今日は、おばあちゃんが入院している病院にお見舞いに行く予定だったからだ。 若菜も、もちろん知っているけれど、だからこそ「行かない。」と言うのだ。 何故か。みんなは、家族は知っていた。 若菜には(見える)のだ、霊が。 これは、生まれつきのようなもので小さい頃から「あ、あの木に男の子が座っているよ!」とか、「おばさんの左肩におじいさんが座ってる。」と言っていたのだ。 歳を取れば見えなくなる、みんなそう思っていた、若菜も。 「街を歩くだけでも騒々しいのに、病院なんか行ったら うようよいるわよ!」 若菜は頭を抱える。 ぽんぽん、と兄の楓(かえで)に促されてしょうがなく「今回だけよ。」と言った。 車で30分かかるその病院は、新しくはない。病院に近づくにつれ頭痛がしてくる。 駐車場に車を止め、さぁ行こうというところで若菜は最後の抵抗をした。 「ほんとに行かなきゃだめ?」 「これが最後かもしれないのよ、かなり衰弱しているみたいだから。」と母は言った。 「分かったわよ……。」 若菜は、おばあちゃんが大好きだ。 いつも若菜の話をニコニコしながら聞いてくれた。 若菜は兄の腕にしがみついて目を閉じる。 「病室まで連れていって。」 (何も見たくない話しかけられたくない。) 「ほら、着いたぞ。」 若菜は目を開けると「ぎゃっ」と叫んだ。 ベッドの横に死神がいたのだ。黒い服を着ていて、手には何か持っている。やせ細った男性だ。30代に見える。 「おや、お嬢さんには俺が見えているのかな?これは珍しい。」 死神は、ニヤリとして若菜を見た。 「なんであなたが、ここにいるんですか!」 「今夜8時に、このばあさんが亡くなるからだよ。」 死神は、そう言うとケケケと笑った。 「待って!まだ連れていかないで!」 「ほう…それじゃあ取り引きをするかい?」 「取り引き?どういう……。」 「君の寿命を5年もらおう。その代わりこのばあさんは、半年 生きられるようにしてやるよ。」 (5年…半年…) 若菜は、心を決めた。 「その取り引き、しましょう。約束は、絶対ですよ。」 「了解。じゃあな。」 死神は、ひゅっと姿を消した。 「若菜さっきからなにを独り言を言ってるんだい?」 大好きな おばあちゃんが、不思議そうに若菜を見る。 「おばあちゃーん!!私、病院は嫌いだけどお見舞いは毎週くるわ!」 と言っておばあちゃんに抱きついた。 「なんだかねぇ、不思議なんだよ、若菜が来てから身体が軽いの。」とおばあちゃんは言った。 「おばあちゃん、まだまだ生きてね。」 若菜がそう言うとおばあちゃんが若菜の頭をなでてくれた。「ありがとうね。」と言いながら。 それから、毎回 兄と一緒に病院に通った。 見たくなくても見えてしまう若菜には耐え難かったが、それよりもおばあちゃんに会いたかった。 おばあちゃんは、あの日から半年後に亡くなった。連絡が来て駆けつけた時にはもう遅かった。分かっていても悲しくて悲しくて若菜は泣きじゃくった。 すると、空気が揺れた。死神だ。 「よう、お嬢さん。約束通りだろ?」 「そうね、感謝するわ。」 「君は70歳で亡くなる。それまでせいぜいがんばって生きるんだな。」 シュッと音がして死神は消えた。 若菜は70歳まで生きた。 「じゅうぶんだわ…あの時もっと寿命をおばあちゃんにあげれば良かった。」と最後に言い残して。 〜終わり〜
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